伝わる人には伝わる

前職を辞した時、ある生徒からもらったメッセージがある。

 

◆原文そのまま(固有名詞は伏せてあります)◆

お久しぶりです。○○です。

先生が仕事をお辞めになるとお伺いしました。
2年と半年ほど××校に通わせていただきましたが、先生ほど素晴らしいと感じる授業とは高校に入ってもなかなか出会えません。

あの頃をよく思い出します。

先生がいたからこそ僕は△△高校に合格できました。
感謝してもしきれません。

ありがとうございました!

実は僕は水野先生のような先生になりたいと思っていたんです。先生の授業を見て、教師になろうとつくづく思いました。

いつかは水野先生のような…いや、先生を越える先生になってみせます!
夢を与える授業をありがとうございました!!

 

 

 

それから約6年・・・先日、その生徒が目標を達成し、来春から教員になるという報告をしに来てくれた。教え子たちからの寄せ書きや思い出の品は全て大切に保管してあるが、まさか本当に実現するとは思わなかった。

 

こちらとしては、「夢を与える授業」をした記憶もなければ、教え子に「こうなって欲しい」と語ったこともない。彼らが自分で自分の歩む道を取捨選択できるような、ちょっとしたお手伝いができたことを嬉しく思った。

 

 

新規生たちの変化

ウチはこんな塾です。元の出来の良い生徒など一人もいない。

歯医者さんで例えるならば、虫歯でボロボロの状態でやって来る生徒ばかり(褒め言葉です)

まずは、歯間ブラシの使い方・フロスの仕方・歯の磨き方など、患者教育から始める。

 

確かに、一度や二度の無料体験で「面白おかしく」「分かった気にさせる授業」をすれば、一時的な治療はできるかも知れないが、いずれ元にもどる。

 

だから、当塾は無料体験の期間は短くても1か月としている。基本的な姿勢を身に付けようと思ったらそれでも足りないくらいだ。

 

この春入塾した生徒にまつわるエピソードを1つだけお話ししたい。

その生徒は、授業中に「ペン回し」をする癖があった。それ以外は素直だったので、正式な入塾を認める運びになった。正式な塾生として迎えた初日に、「1か月以内に、その癖を直して欲しい」とお願いした。いきなり新規の塾生に怒鳴りつけるなどということはしない。勉強以外のところに治療の必要性があれば、遠慮なく口を挟んでいく。生徒は言いつけをしっかりと守り、今では宿題の直しを始め、自ら進んで質問に来るばかりが、自由英作文の添削までこちらに要請してくれるようになった。

 

ここまで来るのに3か月要した。

 

先日、入塾してから2回定期テストを終えたが、5科目で80点程アップしている。ただ、普段の素直で真面目な様子から推察すると、さらに50点の上乗せは可能だと思う。

 

中学生は前期の期末テストが終了した。

まだ未返却の生徒がいるため完全なAverageは算出していないが、塾生平均は400点は確実に超えているのでこちらとしても一安心…

 

当塾は、「特効薬」はお出しできない。だから、「伝わる人にだけ伝わればいい」と思っています。

 

※追記…この夏に入塾してきた生徒たちもほんの少しずつだが変化が見られてきた。自分から宿題を見せにくるようになったり、表情が生き生きしてきたり…そんなささいなことが毎日積み重なってやがて大きな成功体験になっていく。

鍛えあげられた者たちのその後

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「叱られる」ということに対して免疫ができている生徒、そして拗ねたりせずに、素直にそれを受け止めてくれる生徒ほど就職活動でも成功する。

 

月曜日、前職時代の教え子(社会人1年目)とランチに行ってきた。(以下A)

苦労をかけられた生徒ほど印象深いもの。

 

Aとは小6の終わりからの付き合いで、ちっとも成績は伸びず、中3になっても遊んでばかり。学校にもまともに行かず、当時指導していた中3生(約60名)の中でも成績は下から2番目。

 

模擬試験の結果も5科目合計で200点未満。普通科の公立高校はまず無理だと思っていた。やる気が無く、いつもヘラヘラ笑っていたので、中3の10月のある日、これでもかというくらい叱って泣かせた。生徒対応にマニュアルなど無い。ズルをする生徒や言うことを聞かない生徒、態度の悪い生徒は絶対に許さない。「ズルした先にはドブしか待ってない」と言ったことは良く覚えている。

 

その後、Aに、休日は朝7時~夜11時まで塾に来て自習することを義務付けた。姿勢や態度も激変し、徐々に点数は伸び、公立高校の普通科に合格した。

 

スポーツに限らず、勉強でも何でも、一つのことに真剣に取り組む人間は、外見も中身も全て変わる。そして「目に見えない財産」が残る。

 

Aの高校合格と同時に、私も前職を辞することになったが、その時に「今手に入れたものを無駄にしないようにするためにも、高校へ行ってからも頑張ります!!」とメッセージをもらったことを思い出す。

 

その後、Aは高校でも非常に真面目に頑張り、特待生として学費は全額免除で進学。そして、とんとん拍子で就職。挨拶の仕方、敬語の使い方、立ち居振る舞い、何もかもが8年前とは見違えるようになっていた。

 

今の仕事が充実していて、プライベートもいい感じだということは表情から分かる。

色々と大人の会話ができて本当に楽しい時間を過ごすことができた。

 

本当におめでとう、心の底から嬉しいです。またいつでも遊びに来てくださいね。

夏期講習中の嬉しかったこと③

当塾には◯つけや補習のサポートとして複数名のアルバイトがいる。彼らは全員が前職時代の私の教え子で、水野という講師の人間性も熟知している。

勿論、黒板を使っての授業はさせない。我々プロ講師にとって黒板はいわば「聖域」なので、中途半端な授業力しか持たぬ者にチョークは握らせたくないからだ。

 

彼らが、アルバイトとして当塾に入る時に、一つだけ約束してもらったことがある。それは「この塾の他に何でもいいからサーヴィス業(できれば飲食店)でアルバイトをすること」だ。色々な人と関わりを持ち、コミュニケーションスキルを磨いてもらいたい、ということと外界の世界の大変さを体験して欲しかったからだ。

 

この職に携わる人間は(勿論、全員がそうではないので悪しからず)、勘違いしやすい。生徒や保護者の方から「先生」と呼ばれ、「自分はすごい人間なんだ、成績が上がったのは自分のおかげだ」と錯覚をおこしてしまう。以前関わりを持った大切な教え子には、そういった誤った感覚を持ってもらいたくない。

 

彼らは、ホテルやマンガ喫茶、居酒屋などでバイトをしているが、やはり塾講師しか経験していない者との差は歴然としている。指示したことは的確にこなし、生徒に対する気配りもできる。誤解を恐れずに言うならば、中途半端な新卒のホワイトカラーよりもよっぽど優秀であると思う。

 

前回、中学生のテスト対策のサポートで3人に来てもらったが、何一つ無駄な動きがない。紛れもなく、もう一つのバイトでのご指導の賜物であると確信している。一生懸命に教室を動き回り、生徒の答案の◯付けをしている姿と見ていると、彼らが小中学生だった頃のことを思い出す。3人とも何がしらで激しく叱ったこともあれば、泣かせたこともある。深夜までの自習を強要したこともある。

 

にも関わらず、何年も経ってまたこういった形で関わることができて本当に嬉しく思う。

 

余談だが、鍛え上げられた教え子たちは就職活動でもしっかりと結果を出している。

 

今年も早々と内定をいただいた子がいるので、近いうちにお祝いをしたいと思っている。

夏期講習中の嬉しかったこと②

中学生は、夏休みが終わってすぐに、前期期末テストが控えていた。

結果を出すことのできている当塾の塾生はいい意味で「厚かましい」。

最近では、指定された課題をこなした生徒たちが、「もう一回り勉強したいのでプリントをもらってもいいですか?」と申し出をしてきてくれるようにさえなっている。

 

そして休み時間には、友達どうしで問題の出し合いっこをする生徒もちらほら…

 

また別の生徒は質問攻めにしてくれる。

 

彼らの入塾当初の様子からは想像もできない程の成長だと思う。

 

重視しているのは、質問にせよ、プリントの申請にせよ、他人の大人と話す機会である。

なぜなら言葉を磨く機会になるからだ。大人が相手なら多少は考えて話す。そして、多少は言葉を選んで話すことにもなる。さらに、その生徒の育ってきた環境もすぐに把握できるし、ひいてはそのやりとりで成績も大体は分かる。そういう意味では塾の先生と話すのは貴重な機会だ。

 

塾講師は「消耗品」だと思ってもらって構わない。言うなれば、「雑巾」のように扱ってくれた方が嬉しい。入試の直前にボロボロになるくらいまで使い古してくれた生徒とは、今日でも良好な関係が築くことができている。その生徒たちが数年後にどんな姿になっているかは後日記載することにする。